<疲労回復を速めるには?>
運動による疲労は単純なものではなく、エネルギーの消耗、乳酸(疲労物質)の蓄積、筋肉痛、緊張、
ストレスなどが、単独または複合的に形成されている。

【エネルギー消耗による疲労】
運動後30分以内に「糖質」の補給を
 持久系のトレーニングを中心に行った場合に伴う疲労は、
主として筋肉中のエネルギー源(主に糖質:筋グリコーゲン)の枯渇による疲労
体内にストックできる筋グリコーゲンには限界があるため、練習によって筋グリコーゲンが枯渇してしまえば、
当然疲労を感じることになる。
枯渇してしまったグリコーゲンは、運動を中止するとすぐに合成を始めようとする。
なので、このタイミングでいかに「糖質」を効率よく確保できるかが、疲労回復を速める秘訣になる。
 そこで、持久的トレーニングを行った後など、激しく体力を消耗した後には、何よりもまず「糖質」の補給を心がける。
この場合の「糖質」は、
GI値(グリセミック・インデックス)の高いブドウ糖やデキストリンの摂取が適している(血糖値を上昇させインシュリンの分泌を高めることにより、より効率良く筋肉に糖質を取り込むことができる)。
摂取タイミングは、運動後30分以内に、少なくとも体重1sあたり0.7g。
体重60sの男性なら、約42g(160kcal)。

乳酸系の疲労】
 瞬発系の運動のように無酸素状態での激しいトレーニングを行うと、筋肉中乳酸という疲労物質が蓄積される。
この乳酸の除去を速め、疲労回復を軽減させるための有効な方法は
@
入念なクールダウン
 運動後のクールダウンをしっかり行うと血流が良くなるため、乳酸は筋肉内から血中に流れ出し、
肝臓を利用して、ブドウ糖に変化する。
A
糖質と一緒にクエン酸を摂取する
 人の代謝において重要な関わりを持つクエン酸は、主に柑橘系の果物や梅干などに多く含まれている。
クエン酸には乳酸を除去し、糖質と一緒に摂取することによって、筋肉や肝臓のグリコーゲンの回復が促進するなど、
疲労回復に有効であると考えられている。

【筋肉系の疲労】
すばやい疲労回復にはアミノ酸
 いわゆる筋肉痛など筋肉の疲労というのは、筋繊維の損傷のこと。つまりトレーニングをした後の筋肉は壊れていて、特に強度の高いトレーニングをした後はそれだけ筋繊維の損傷が激しく、筋肉は疲労している。
筋肉は約80%近くがタンパク質なので、筋肉の修復にはタンパク質が欠かせない。
 ところが疲労感により食欲が低下したり胃腸の働きが弱っていて胃液の分泌が下がっている場合には消化活動にも時間がかかる。
そこで
有効なのが運動直後のアミノ酸摂取。アミノ酸はタンパク質が最小単位にまで分解されたものだが、
体の中で分解する過程がない分、消化吸収が速く、筋肉への取り込みが速いため疲労回復を速める。
さらに、筋肉中に多く存在する
分岐鎖アミノ酸(BCAA)を運動前に摂取すると、摂り入れたBCAAが優先してエネルギーとして使われるため、筋タンパクの分解を防ぐというメリットもある。
 プロテインを利用する場合は、消化吸収が速く分子の細かいペプチドタイプのプロテイン、またはグルタミンを配合したプロテインが良い。

【神経系の疲労】
集中力が切れるのは脳のエネルギー不足
 運動中、集中力や判断力などに乏しくなってきたら、唯一脳のエネルギー源である糖質(グルコース)の減少のため。このような低血糖状態を避けるために、運動直前または練習の合間に、キャンディー、ブドウ糖のタブレット(ザバスエナジーアップタブ)を補給したり、集中力アップに効果的なBCAAタブを利用するのが良い。

 また精神状態が安定していないといいパフォーマンスは期待できないので、脳と筋肉をつなぐ神経系の伝達に深く関与しているカルシウムの補給も大切。さらに代謝など間接的に関わりのあるビタミンB群やストレスに対抗するビタミンCなどは疲労回復を促すために強化したい栄養素といえる。
そこで乳製品や色の濃い野菜、海藻類、柑橘系の果物等は日頃から積極的に摂るようにする。
 
 疲労の度合いはセルフチェックだけでは把握しきれない面もあるので、血液検査や栄養状態のチェックなど
科学的なデータなどに目を向けるのも大事だ。


<すぐにできる栄養バランスアップ>
選手に必要な栄養を摂るための食事は表の@〜Dの5つが揃った「栄養フルコース型」の食事で、
この中で@とAは比較的揃えやすい。または意識しなくても揃っていることが多い。
反対にB〜Dは意識しないと、なかなか毎食揃えるのは難しい。
そこで、簡単に自分で出来るバランスアプ方法として、
毎食牛乳と100%オレンジジュースを飲む方法がある。
100%オレンジジュースは栄養フルコース型C、牛乳はDにあてはまる。
この2つを定番にするだけで、栄養バランスはグンとアップする。しかもこの2つには、
糖質、ビタミンC、タンパク質、カルシウムという
「持久系」の競技に必要な栄養がバランスよく含まれている。

「栄養フルコース型」の栄養
@主食 Aおかず B野菜 C果物 D牛乳
主な役割 エネルギー源 カラダづくりの材料 体調の調節 体調の調節 カラダづくりの材料
主な栄養素 糖質 タンパク質
脂質
ビタミン
ミネラル
食物繊維
ビタミンC
糖質
食物繊維
タンパク質
カルシウム
食品名 ごはん
パン
めん類
イモ



豆腐
具の多いみそ汁
煮物
サラダ
野菜炒め
野菜スープ
果物各種
果汁100%ジュース
牛乳
ヨーグルト
チーズ



1.果汁100%ジュース
 @
オレンジ・・・糖質とビタミンCを多く含み、疲労回復やスムーズなエネルギー生産を助ける「クエン酸」も含まれている。
 A
グレープフルーツ・・・同じ柑橘類であるオレンジと成分は似ているが、ビタミンCはやや多め、
  市販されている主な果汁100%ジュースの中では、ビタミンCはトップ。
 B
みかん・・・上の2つに似た成分だが、ビタミンC量はグレープフルーツの2/3程度。
 C
ぶどう、りんご、パイナップル・・・これら甘いタイプの果物の果汁100%ジュースは、糖質を含むがビタミンCはほとんど含まれていない。
  エネルギー源として利用するには良い。糖質の量に大きな差はないが、中でも多く含まれているのはぶどう。

主な果汁100%ジュースの栄養成分比較
種別 エネルギー(kcal) 糖質(g) ビタミンC(mg)
オレンジ  95  23.6 95
グレープフルーツ 75 18.5 114
みかん 86 22.3 68
ぶどう 101 25.8 微量
りんご 92 24.5
パイナップル 88 23.9 11
(番外)みかん1個 37 8.8 26
(それぞれ濃縮還元果汁コップ1杯(200ml)あたり)



2.乳製品
 @
牛乳・・・タンパク質やカルシウム、ビタミンミネラル各種をバランス良く含む。普通の牛乳にはタンパク質とほぼ同じ量の脂質が含まれて
  いる。濃厚ならそれ以上に脂質が多い。低脂肪牛乳なら脂質の量は普通の牛乳の半分以下、無脂肪牛乳やスキムミルクなら、
  脂質はほとんど含まれていない。
 A
ヨーグルト・・・タンパク質やカルシウムは牛乳と同等に含まれている。飲むヨーグルトも同様だが、いずれも甘味やフレーバー、
  フルーツやソースなど具が入ったものになると、その分糖分やエネルギーが多くなるので、好みや目的に応じて選ぶようにする。
 B
チーズ・・・栄養的にみると、熟成によって水分が少なく濃縮されたような形になるため、同じ重量あたりで比べるとタンパク質、脂質、
  カルシウムとも多くなる。カッテージチーズや低脂肪タイプのプロセスチーズなど、種類によっては脂肪分の少ないタイプもある。
  チーズだけで乳製品としての栄養を摂ろうとすると脂質の摂りすぎが懸念されるので、他の乳製品と組み合わせて利用するようにする。
 C
生クリーム・・・牛乳を遠心分離にかけ、脂肪分の多い所だけを取り分けて作られたもの。
  コーヒー用やホイップクリーム用などがあるが、いずれにしても脂質が18%〜40%以上と、かなり多め。
  タンパク質やカルシウム補給のために取り入れるのはおすすめできない。

 なかには牛乳が苦手という人もいるが、これには体質的にダメな場合と、単に好き嫌いとしてダメな場合があると思うが、
体質的にダメな人は、牛乳に含まれる「乳糖」という成分が体内で分解でlきない「乳糖不耐症」の場合。
いずれの場合でも、牛乳そのままだとお腹の調子が悪くなるけれど、カフェ・オ・レやシチューなどのように温めたら大丈夫、という場合がある。
 乳製品自体はカルシウム供給源として非常に効率が良いので、まずはこのような方法で試してみることをお勧めする。それでもどうしてもダメな場合は、カルシウム不足にならないように乳製品以外のカルシウムの多い食品を積極的に取り入れるする。
 小松菜などの青葉、ひじきや切り干し大根などの乾物類、豆腐、がんもどきなどの大豆製品、まるごと食べられる小魚などに多く含まれている。


次回は体脂肪減量


<BCAA>とは?
日本語で言うと
分岐鎖アミノ酸という。
人間の身体をつくるアミノ酸20種類のうち、体内では合成できない
必須アミノ酸
8(9)種類ある。
・イソロシン
・ロイシン
・リジン
・含流アミノ酸(メチオニン、シスチン)
・芳香族アミノ酸(フェニールアラニン、チロシン)
・スレオニン
・トリプトファン
・バリン
・(ヒスチジン)

BCAAはこの中の
バリンロイシンイソロイシンの3種類を指し、
その構造から分岐鎖アミノ酸と言う。
その働きは、主として骨格筋を形成。筋肉、肝機能の強化作用があり、
また増えてくると筋肉疲労になる血中乳酸値の上昇を抑制する作用がある。
筋たんぱくの分解を防ぐ
持久力の向上
集中力・やる気の維持
BCAAを運動前やその合間に補給することによって、筋肉のダメージを
少なくしたり集中力を維持するなど、選手のパフォーマンスをサポートしてくれる。

だいだいが使用しているアミノ酸。
味の素の「アミノバイタル」プロ。

自転車による6秒間の最大運動を10回繰り返す
実験の結果。クレアチンローディングしていた
選手は何度も最大パワーを維持することができた。

<クレアチン>とは?
クレアチンは主に筋肉中に存在するエネルギー供給物で、肉や魚などに含まれ、
また体内で特定のアミノ酸から合成される。その働きは、
(1)瞬発力の維持
(2)筋肉量の増加
(3)乳酸の抑制

図のデータは、6秒間の全力自転車こぎ運動を1分間の休憩をはさみながら

10回繰り返した時のパワーの変化を調べた実験。
この結果から、クレアチンを摂取したグループ(クレアチン群)は、
摂取しない(プラセボ群)に比べそのパワーが落ちにくいことが分かる。
ではなぜハイパフォーマンスが維持されるのか。
@ATPによるハイパワー
ハイパワーのエネルギーは、筋肉細胞に含まれている
アデノシン三リン酸(ATP)
という物質で、様々な栄養素をもとに体内で合成されて、
エネルギーを放出した後は分解されて、
アデノシン二リン酸(ADP)になる。
ATPは常に筋中に存在するが、その量はわずかであり、筋収縮によって
短時間で消耗されてしまう。
ACPによるATPの再生
ADPをATPに再生してハイパワーを生み出すためには、
クレアチンリン酸(CP)
を動員必要がある。ADPはCPの分解によって生じる
リン酸基(P)と結合して、
直ちにATPに再合成される。しかし、CPも筋中にわずかな量しか存在しないため、
CPが無くなるとATPの補給ができなくなり、筋活動は不可能となる。
約8秒でこの系からのエネルギー供給はストップする
Bクレアチン摂取によるCPの増加
クレアチンを摂取して体内のCP量を強制的に増やしてATPの再合成を活発化させる。
このようにクレアチンを摂取することにより、ATPが長く使えれれば、
ハイパワー継続時間が長くなるため瞬発力もアップし、持久力もつく。
またクレアチン摂取のもう一つの効果は、筋肉疲労の原因である乳酸の生成を
抑制するという働きがある。

<摂取方法>
トレーニング・運動レベルが上がるということは、筋肉への負担が大きくなると
いうことなので、
クレアチンを使用し始める前には、十分なウォーミングアップと
クールダウンを入念に行うこと
が大切。
また水分をしっかり補給し、カリウム・カルシウム・マグネシウムなどのミネラル
が豊富な食事をしっかり摂る
ように注意しなければならない。
クレアチンローディング
体内のクレアチン量を増やすためにはクレアチンを溜め込む作業が必要。
『ローディング期』と『メンテナンス期』を設ける摂り方が一般的。
試合日から逆算して約3週間前から摂取し始めるのが理想とされている。
最初の6日間(ローディング期)は、1日20g。
毎食後と練習後の1日4回に分けて、5gずつ摂る。
その後の2週間(メンテナンス期)は、1日5g。
練習後に1回飲めば良い。

飲み方は水または100%ジュースと一緒に飲むのが一般的。
安全性について
クレアチンはもともと体内に存在する物質なので、IOC(国際オリンピック委員会)
などの禁止薬物には該当しない。
ちなみにクレアチンは肉や魚にも含まれているが、わずか5gのクレアチンを
確保するためには、肉なら約1kg魚なら500g以上必要とする。


<ビタミン>とは?
ビタミンとは人間が生きていくために必要な体内の機能を維持し、代謝を調節するために
必要な微量栄養素を指す。10種類以上あり、いずれも体内で合成できない、または充分量を
合成できないため、食事やサプリメントから摂り入れなければならない。
それぞれの必要量は1日あたり何rと微量だが、偏った食事が続くと、自覚症状がないまま
滞在性欠乏症に陥ってしまう可能性がある。欠乏状態が続いても、何となくだるい、
疲れやすい、食欲がない程度の自覚症状しかないため、ビタミンが不足していると気が付きにくいところが
問題だ。
ビタミンは大きく
水溶性脂溶性に分けられる。
<水溶性ビタミン>
VB1VB2VB6、VB12VCナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン
―水分や熱により破壊されやすいものが多く、また一度に大量に摂取しても体内で使いきれない分は
蓄えておくことができず、数時間後には尿中に排出されてしまうので、毎食コンスタントに
取り入れることが大切。
<脂溶性ビタミン>
VAVDVE、VK
―肝臓や脂肪組織に蓄積されるので、必ずしも毎日摂る必要はなく、
逆に極端な過剰摂取には注意が必要。

油脂との相性がいいので、野菜炒めなど油を使って調理すると効率よく吸収される。

<ビタミンB1(サイアミン)
性質
水に溶けやすい
・加熱、酸に安定(アルカリ性不安定)
・紫外線で分解
生理作用
・糖代謝に補酵素として作用(エネルギー発生に関係)
・神経系統の調整
・消化液分泌促進(食欲増)

欠乏症
・脚気、全身倦怠感
・食欲減退
・便秘

<ビタミンC>(アスコルビン酸)
性質
・熱、空気、アルカリ等に弱い
酸、低温に強い
・水に溶けやすい

生理作用
・コラーゲンの生成
・病原菌に対する抵抗力を増す
・体内に蓄える量は少ない
・抗酸化物質

欠乏症
・骨形成不全
・貧血
・壊血病
<ビタミンA>(レチノール)
性質
・水に溶けない
・熱に安定
・体内でカロチンから合成される
生理作用
・発育
・抗酸化物質
・細菌に対する抵抗力
・視力(目の調節)
欠乏症
・夜盲症(暗くなると目が見えなくなる)
・眼、角膜乾燥症

<ビタミンB2(リボフラビン)
性質
・B
1より水に溶けにくい
・耐熱性、酸性で安定
・光源には特に敏感
生理作用
・発育を促進
アミノ酸、脂質、炭水化物の代謝に必要
生体酸化の水素伝達作用
欠乏症
・発育阻害
・口角炎

<ビタミンB6(ピリドキシン)
性質
・酸性でやや安定
・中性、アルカリ性では不安定
・光により分解
生理作用
アミノ酸代謝に酵素の補酵素として大切な働きをし、たんぱく質代謝に重要な役割をしている
・皮膚の抵抗力を強め、カブレやニキビを予防する
ビタミンB2との併用はいっそう効果がある
欠乏症
・成長が止まる
・皮膚炎

ビタミンB1の多い食品 ビタミンB2の多い食品
食品名 目安量(g) ビタミンB1(r) エネルギー(kcal) 食品名 目安量(g) ビタミンB2(r) エネルギー(kcal)
玄米ご飯 1膳(130g) 0.21 199 納豆 1カップ(50g) 0.28 100
玄米シリアル 1カップ(30g) 0.38 120 豆腐(木綿) 1/2丁(150g) 0.05 116
ライ麦パン 6枚切り1枚(70g) 0.18 186 牛乳 1本(200cc) 0.30 118
豆腐(木綿) 1/2丁(150g) 0.11 116 ヨーグルト 1個(150g) 0.30      90
ごま 大さじ一杯(8g) 0.08  46 ブロッコリー 3房(100g) 0.27      43
ピーナッツ 30粒(24g) 0.02 135 干ししいたけ 2個(4g) 0.07 0 
きゅうりのぬか漬け 1/2本(50g) 0.10  8 1個(50g) 0.24    81
豚もも肉 (100g) 1.13 158 サバ 1切(80g) 0.43 191
焼肉レバー 2串(80g) 0.30 89 うなぎ蒲焼き 1人前(50g) 0.25 184
うなぎの肝 2串(50g) 0.38 54
ビタミンCの多い食品
食品名 目安量(g) ビタミンC(r) エネルギー(kcal)
トマト 中1個(240g) 48 38
キャベツ 4枚(220g) 97 53
ほうれん草のおひたし 1人前(100g) 85 28
ブロッコリー 3房(100g) 160 43
ジャガイモ 中1個(150g) 35 116
いちご 1/2パック(200g) 160 70
オレンジ 1個(130g) 78 60
キウイフルーツ 1個(60g) 48 34
グレープフルーツ 中1個(200g) 80 72
果汁100%オレンジジュース 1本(200cc) 70 80
トマトジュース 1本(250cc) 38 38

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